雇用保険のこと、知っていますか?

失業保険

社会保険とは、公的な費用負担により労働者が怪我や失業、育児や介護、加齢などにより働けなくなった時に給付を受けるための制度です。
具体的には、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つの総称です。

知っているようで知らない。その立場になってみなければ分からない。
まぁ、必要に迫られなければ知らなくても、何ら関係ない問題だったりしますものね。

世の中には様々な公的制度がありますが、その制度の存在を知り、手続きの方法などを理解して行動しなければ、その制度を正しく利用することはできません。

しかし、いざ必要になった時、誰も教えてくれません!

会社員なら、保険料を毎月給与から天引きされているにもかかわらず、制度の仕組みや手続き方法などを知っているかどうかによって、平等に支援を受けられないかも知れないのです!

特に転職や退職を考えている場合、行動を起こす前に雇用保険制度の情報を把握しておく必要があると思います。

私自身の話になりますが、退職する前に知っていれば、職業訓練の講座の内容や申し込み期間を考えて、退職の時期を決定することができました。

知っていると知らないとでは、雲泥の差ですね。

雇用保険については、退職する前から絶対に知識を身につけておくべきです。

なぜなら、もしも退職、即就職しない場合の選択肢を広げ、時間を逆算することができます。

知らなかったがために。。。ということがないように、少しでもお役に立てるようにと願いをこめて、離職するに当たっての雇用保険について見ていきましょう。

雇用保険について

雇用保険とは

雇用保険とは、離職した人が再就職のための活動において、給付金(給付期間90日~360日)による支援を受けられる制度、つまり失業者のための保険と思われている場合が多いようです。

実は、雇用保険は失業給付金だけではありません。

労働者の能力開発、失業の予防、雇用機会の増大などのための教育訓練給付金育児休業給付金介護休業給付金などもすべて雇用保険に括られています。

雇用保険制度は、労働者に安定した生活と雇用を約束するために設けられた制度です。

雇用保険の制度とは

では、雇用保険制度の内容を見てみましょう。

  • 失業期間中、失業給付金が受け取れる
  • 受給途中で就職した場合、再就職手当が受け取れる
  • 一年以上加入の場合、何度でも給付金が受け取れる(会社都合で退職時は半年の加入で可)
  • 無料で職業訓練に通うことができる
  • 資格取得のための費用を負担してくれる
  • 育児や介護で休職しても給付金が受け取れる
  • 給付金は申告不要の非課税である

これ以外にも様々なメリットがたくさんあります。

知らなかったがために損をしないように今のうちに是非理解しておいてください。
もっと早くに知っておけば良かった。。。とならないように。

知っていれば、時間もお金も無駄にならずに済むことってありますよね。

失業時の雇用保険制度

雇用保険には、労働者のためにいろいろな支援が用意されていることが分かりました。

その中でも離職すると受けられる雇用保険について見ていきましょう。

「雇用保険」「失業保険」「失業手当」「基本手当」「失業給付」など、呼び方がいろいろありますが、正しくは雇用保険の求職者給付、そして、一日あたりの給付金を基本手当と言います。(以下、失業保険、失業手当のことばに統一して説明していきます)

失業保険の目的は、会社を退職した後、職業訓練を受けたりする期間や再就職までの生活を保障するためにあります。

失業中は収入がありませんので、失業保険の失業手当を受けながら新しい仕事を見つけられるという制度は、心強くありがたいです。

仕事に就いていないブランク期間が長くなると次の就職に不利とよく言われますが、だからと言って、焦って就職したらミスマッチだったなんてことには、なりたくありません。
心のゆとりは大切です。

雇用保険の加入条件とは

事業所の規模、働き方などにより一定の要件を満たすと加入することになります。
対象は、正社員のみではなく、アルバイト、パート、契約社員など雇用形態には依りません。

雇用保険は、31日以上の雇用の見込みがあり、週20時間以上働いている人に対して、事業者は届け出を行わなければなりません。この条件で働いているならば、雇用保険に加入することができ、必要な時にその制度の支援を受けることができます。

給与明細を確認してみましょう。

事業主に「そもそも知識がない」「手続きの手間が面倒」「会社側も保険料を負担しなければならない」等の理由により手続きされていない場合があります。

もしも、加入要件を満たして仕事をしているにもかかわらず、明細に雇用保険料の支払いがなければ違法です。(但し、罰則規定がありません)

ハローワークに相談すると、遡って対応してくれます。

雇用保険料の計算

「雇用保険」「労災保険」を合わせて「労働保険」と呼び、両保険料の納付は一つのものとして扱われます。

労災保険料は事業者が全額負担するものですが、雇用保険料は事業者と労働者の双方が負担します。しかし、事業者の方が多く負担する点が、他の保険料と異なるところです。

①労働者負担②事業主負担①+②雇用保険
一般の事業3/1,0006/1,0009/1,000
農林水産業・
清酒製造の事業
4/1,0007/1,00011/1,000
建設の事業4/1,0008/1,00012/1,000
令和2年度の雇用保険料率(令和2年4月1日~令和3年3月31日)

例として、会社員(一般の事業)Aさんの給与にかかる雇用保険料を計算してみましょう。

控除前の給与30万円 → 30万円×3÷1000=900円

年金や健康保険と比べて、保険料の負担が軽いと感じるのではないでしょうか。

雇用保険はどれだけの期間、どれだけもらえるの?

給付期間、給付金額については、加入期間、離職前の6ヶ月の給与、退職理由などによって違います。

給付期間と退職理由の関係

給付期間は、退職理由と加入期間(雇用保険の納付期間)の条件により決定されます。

退職理由は、自己都合による退職よりも会社都合による退職の方が、待機期間がなく長い期間の受給となります。
これは、再就職までに時間的余裕がなく、退職を余儀なくされたことによるからです。
給付日数と退職理由の詳細は別ページで解説しています。

基本手当の日額(給付額)について

給付額は、離職前6ヶ月の給与が多いほど、「基本手当の日額(一日当たりの給付額)」が高くなります。計算の基となる給与とは、控除前の総支給額となりますので、この半年に繁忙期などが重なり残業が発生している場合、基本手当の計算の基礎に含まれることになります。

1.基本手当の日額は、原則として、離職前6ヶ月間に支払われた給与の合計金額を180で割った金額(賃金日額)のおよそ80%~45%になります。
但し、基本手当の日額については、別途上限が定められています。
※基本手当の日額は、「毎月勤労統計」の結果に基づき、毎年8月1日に改訂されます。

2.基本手当の日額は、年齢層ごとにも上限が定められています。

厚生労働省は、令和2年8月1日以降、雇用保険の基本手当日額を変更することを発表しました。
以下の基本手当日額は、改訂された最新版となります。

今回の変更は、令和元年度の平均給与額が平成30年度と比べて約0.49%上昇したこと及び最低賃金日額の適用に伴うものであるとのことです。 詳しくはコチラ

●離職時の年齢が30歳未満または65歳以上の方

賃 金 日 額(w円)給 付 率基本手当日額(y円)
2,574円以上5,030円未満80%2,059円~4,023円
5,030円以上12,390円以下80%~50%4027円~6,195円(※1)
12,390円以上13,700円以下50%6,195円~6,850円
13,700円(上限額)6,850円(上限額)

●離職時の年齢が30歳以上45歳未満の方

賃 金 日 額(w円)給 付 率基本手当日額(y円)
2,574円以上5,030円未満80%2,059円~4,023円
5,030円以上12,390円以下80%~50%4027円~6,195円(※1)
12,390円以上15,210円以下50%6,195円~7,605円
15,210円(上限額)7,605円(上限額)

●離職時の年齢が45歳以上60歳未満の方

賃 金 日 額(w円)給 付 率基本手当日額(y円)
2,574円以上5,030円未満80%2,059円~4,023円
5,030円以上12,390円以下80%~50%4027円~6,195円(※1)
12,390円以上16,740円以下50%6,195円~8,370円
16,740円(上限額)8,370円(上限額)

●離職時の年齢が60歳以上65歳未満の方

賃 金 日 額(w円)給 付 率基本手当日額(y円)
2,574円以上5,030円未満80%2,059円~4,023円
5,030円以上11,140円以下80%~45%4027円~5,013円(※2)
11,140円以上15,970円以下45%5,013円~7,186円
15,970円(上限額)7,186円(上限額)

※1y=0.8w-0.3{(w-5,030)/7,360}w
※2Y=0.8w-0.35{(w-5,030)/6,110}w、y=0.05.w+4,456 のいずれか低い方の額

ここまで、離職時の雇用保険の受給については、加入期間、離職前の6ヶ月の給与、年齢、そして退職理由により受給期間、受給金額が決定することを見て来ました。

加入期間、離職前の6ヶ月の給与、年齢は変えようもない事実です。
しかし、退職理由については、事業所と退職者との間で、見解の相違が生じることが多いので別記事で詳しく見ていくことにしましょう。